2024鈴鹿8耐レースレポート
2024 FIM 世界耐久選手権 第3戦
“コカ・コーラ”鈴鹿8時間耐久ロードレース第45回大会
会場:三重県鈴鹿サーキット国際レーシングコース(1周5.821km)
日時: 7月17日(水)公式テストセッション 天候:晴れ時々雨
7月18日(木)受付・車検 天候:晴れ
7月19日(金)予選 天候:晴れ
7月20日(土)トップ10トライアル、公式テストセッション 天候:晴れ
7月21日(日)決勝11:30スタート19:30ゴール 天候:晴れ
観客動員数3日間延べ5万6,000人(昨年より1万4,000人増)
チーム名:MATSUNAGA KDC & YSP NAGOYA KITA with RPT NAGANO
ライダー:#411/荒川 雅彦 /櫻山 茂昇/加藤久幸
マシン:YAMAHA YZF-R1
予選:46チーム中40位(平均TIME2‘14.050Best TIME2‘13.183櫻山)
結果:46チーム中総合36位EWCクラス26位周回数182周
トップとの差38周スティント数11回ピット滞在時間48‘25.410
(Best TIME 2‘16.014櫻山)
日頃よりRPT(Racing Project Team)長野にご支援、ご声援をいただきまして、誠にありがとうございます。おかげ様で今シーズンもオートバイによる長野県地域活性化を目指しRPT長野の活動を継続することが出来ました。多くの皆様に支えていただき心より御礼を申し上げます。
今シーズンは、鈴鹿を拠点にレース活動を行っているTeamマツナガさんとタッグを組み、新体制、新マシンになりました。チームの最大目標である「鈴鹿8耐」の参戦レポートになります。
■7月19日公式予選
7月17日の公式練習時に荒川選手が転倒するアクシデントが発生しましたが、メカニック達の懸命な修復作業により、予選に間に合いました。
8耐の予選はグリッドを決めるための予選となります。参加ライダーがそれぞれの予選セッションでアタックを行い、上位2名のライダーの平均タイムによって決勝のグリッドが決まります。また、各ライダーは各予選セッションのトップライダーの110%以内という基準タイムをクリアしなくてはいけません。
●Rider BLUE 荒川選手 天候:晴れ
荒川選手は、集団を避けるため少し遅れてのコースイン、単独走行でのアタックを開始しました。3周目に一度ピットに戻り、再びコースインしてアタックを再開2‘15.583を計測しました。110%の基準タイムをクリアしグループ内44位となりました。
●Rider YELLOW 櫻山選手 天候:晴れ
櫻山選手は、集団の中でタイムアップを狙い早めのコースインを行いました。しかし、すぐにピットへ戻ります。マシンの不調を訴えた為、確認するとタイヤの空気圧が通常よりも高い状態になっており、早急に空気圧の調整を行い再びコースインしました。異常な空気圧での走行は転倒リスクも高くなるので、早めに気付けたのは不幸中の幸いでした。そして、計測3周目に2‘13.183をマーク、自身のR1でのベストタイムを更新して予選をグループ内36位で通過しました。
●Rider RED 加藤選手 天候:晴れ
加藤選手は、鈴鹿8耐初参戦でしたが、普段通りの冷静な状態で集中し予選の後半残り時間10分でコースイン、アタックを開始しました。徐々にペースを上げ、計測3周目に2‘14.917を計測し見事に110%の基準タイムクリアしグループ内35位で決勝出走を決めました。
■7月21日鈴鹿8耐決勝レース
迎えた8耐決勝の天候は梅雨明け後の正に真夏となり、最高気温34℃の猛暑日となりました。参戦チームや観戦者にとっても暑さが厳しい状況です。そして、スタート位置は平均タイムで40番グリッドからのスタートとなります。
伝統のル・マン式スタートは荒川選手の巧みな技術により順調な出だしとなりましたが、酷暑となった決勝レースは序盤から転倒車が続出するなど波乱の幕開けとなりました。その後は、トラブルが出るチームもありましたがセーフティーが介入すること無く、順調にレースは進んで行きました。迎えた第3スティントで櫻山選手から、加藤選手へ交代し初の鈴鹿8耐決勝レースを走りました。順調に周回を重ねていましたが、19周目にMCシケインで転倒のアクシデントが発生してしまいます。
転倒のアクシデント後、加藤選手は傷ついたマシンをなんとか自力でピットに戻します。加藤選手も過酷な暑さの中、懸命な走りで周回を兼ねていましたが熱中症になってしまったようです。マシンがピットに到着してからは、メカニック達がスペアパーツを用意し素早く修復を開始します。約30分で修復が完了、ライダーは荒川選手に交代し、再びコースイン、鈴鹿8耐の決勝レースを継続することが出来ました。
荒川選手が20周を回り、ライダーは櫻山選手に交代です。実は、転倒のダメージは完全に直っておらず、リアブレーキにエアが混入してしまい、リアブレーキが使えない状態で走行していました。しかし、再び修復作業に入ってしまうと完走条件となるトップの75%以上の周回をクリア出来なくなってしまう恐れがあることから、リアブレーキを使わないライディングに切り替えライダー達は走行を続けました。完走することを目標に、チーム一丸となってゴールを目指します。
櫻山選手は酷暑の中、リアブレーキも使えない状況でしたが24周を走り切り、加藤選手へ交代です。加藤選手も転倒から直ぐに体力を回復させ厳しい状況でしたが、16周を走って、荒川選手に交代です。荒川選手も、リアブレーキが使えない状態でしたが、懸命な走行を続け20周を周回して櫻山選手に交代です。櫻山選手は、短いインターバルでの走行となり体力的にとても厳しい状況でした。一時は大幅にタイムを落としてしまう周回もありましたが、再びペースを回復させ19周を周回し、いよいよナイトセッションに突入して行きます。
チームの意向、そして、本人の希望によりゴールチェッカーライダーは櫻山選手ということで、ナイトセッションは、各ライダーは短い周回数でバトンを繋ぎます。加藤選手が8周を走り、荒川選手に交代時に最後の給油を行って4周を走り、ラストスティントは櫻山選手へ交代です。櫻山選手は、再び短いインターバルで、なんとか体力を回復させて最後のコースインです。リアブレーキが使えないマシン、体もボロボロ、満身創痍の状況でしたが、暗闇の中、最後の力を振り絞りチェッカーを目指します。そして、7周目にチェッカーを受けることが出来ました。
今大会でも、様々なトラブルやアクシデントに見舞われました。しかし、チーム一丸となって最後まで諦めることなく、それらを乗り越えゴールまでマシンを走らせ完走出来たことは、大変嬉しく思います。そして、私達、さらには、チームに関わった全ての皆様が、感動や達成感を共感していただけたレースになったと思います。鈴鹿8耐は、本当に多くの企業様、個人サポーター様、そして、スタッフに支えていただき、参戦することが出来ます。ご支援、ご声援いただきました全ての皆様に心から感謝を申し上げますと、共に、引き続き鈴鹿8耐へ挑戦して行きたいと思いますので、今後ともご支援、ご声援を賜りますようお願い申し上げます。誠にありがとうございました。
■ライダーコメント
●Rider BLUE荒川 雅彦選手
今回で3回目になる8耐。多分、いつもより楽に乗れるかな、理由は身体に余計な力みが入らず自分自身のラップタイムも上がってきたから。ライダーブルーでスターティングライダーは嬉しかったですが。「楽」なんてとんでもない。走り出してこれはまずいな、スティントの周回数をこなせるか?毎周サインボードを見る度に疑問に思った。出番が来る度に走る自信が失われていきました。もう暑すぎですわ。でも他のライダー、メカニックさん、スタッフの皆さんも頑張っているから音を上げられません。公表するのが恥ずかしいのですが、ガッツだ、根性だ、と自分自身と闘っておりました。完走した事を誇りに思っていますし、手伝ってくれた仲間に感謝。本当にありがとう!次回は来年。もうスタートを切りましたね 笑
●Rider YELLOW櫻山 茂昇選手
いつもRPT長野にご支援、ご声援をいただきまして心より感謝申し上げます。誠にありがとうございます。
昨年の右上腕骨折から、再びレースに復帰出来るのかという不安、チーム体制、マシンを大きく変更して参戦しての不安、様々な不安を抱えての鈴鹿8耐参戦となりました。8耐本番直前まで、思うようなライディングが出来ず、もう自分はダメなのかと諦めかけてしまいそうな時もありましたが、本当に多くの皆さまに支えていただき、予選本番では自己ベストタイムの更新や決勝レースでもチーム最多周回数を走り切るなど、自分でも驚くパフォーマンスを発揮することが出来ました。これもひとえに、いつも支えて下さる皆様のおかげ様です。ありがとうございます。
今大会も様々なアクシデントがありましたが、チーム一丸となって、誰一人諦めなかった結果、完走という目標を達成することが出来ました。ご協賛企業様、個人サポーター様、応援していただいた皆様に改めて御礼申し上げます。また、共に闘ったスタッフの皆さん、本当にありがとうございました。
●Rider RED加藤 久幸選手
5月末に急遽、チーム代表の怪我により鈴鹿8耐に参戦する事になり、心と身体の準備を始め、万端とは言えないながら合同テストに参加し調整して来ました。
フリー、予選と自分なりに順調な流れと、いつも通りの走りやマシンとのマッチングをした。自信もって決勝へ!スタートから順調にライダー交代・・・緊張なく僕へバトン貰いコースインし、タイムも悪くなく周回を・・・15周目から暑さに負けだし集中力が落ち、数年ぶりに転倒させてしまい、ハンドル折れながらもギリギリ走れ ピットまで・・・修理はメカに任せ30分のロスはありましたが他のライダーの助けもあり目標としていた完走へ繋がりました。チームの皆や、各スポンサー様、チーム長野の皆さんに助けられた耐久。とても良い経験をした事と不安なく走れた事に感謝したウィークでした。この先のサンデーに生かせるように今後も頑張ります。
Teamマツナガ 松永代表
初めに、各スポンサー様、サポートして頂きました皆様には心より御礼申し上げます。
今年の8耐はここ数年で一番暑い大会になったとかで、熱中症で多くのライダーの転倒がありました。路面温度が手元の計測では62℃、ライダーの走行上は路面の照り返しで44℃となりライダーもかなりの暑さだったと思います。
今年はTeamマツナガ、RPT長野とサンデー開幕戦からコラボレーションして絆を深め、8耐の準備を進めて来ました。私が第2戦のトライアウトで転倒車輛に巻き込まれ骨折をして出走を断念したために、代役で急遽、加藤に出走をお願いしました。まともに準備も出来ずに走らせてしまい、結果、暑さで転倒をさせてしまった事に責任を感じています。
しかし、ハンドルバーが折れているにもかかわらず苦しい中、何とかピットまで戻って来てくれた時は涙が出ました。修復作業にメカニック皆の力で30分程で終わらせ、荒川に交替しその後順調に進み、暑さで苦しい中3人のライダーが頑張ってくれたおかげで、何とか完走する事が出来ました。チームオーナーとしては、8耐3年目ですが、とても感動した年でしたし、今後に繋げる意味の有る大会だったと思います。
■Teamマツナガ 鈴木監督
先ずは皆様お疲れ様でした、またご支援頂いた協賛社様、個人サポーターの方々ありがとうございました。一言で言って、過去イチ「タフな8耐」でした。これまで自身も15回の鈴鹿4耐と3回の8耐を監督として携わらせて頂きましたが、気候、暑さ、瞬間的な豪雨、また内容も含めて過去一番のタフなウィークだったと感じます。やはり先ず、エースライダーの松永を欠いた事、これは準備段階での大きなターニングポイントでした。ですが自分が真っ先に思い立ったのは、「代役=加藤」でした。彼にはレースキャリアや実績、またレースに対するスタンス、どの観点からも自分としては絶大なる信頼を持っていました。こんな流れでウィークを迎えた訳ですが、ここで皆様にお伝えしたいのは、これに至るまでの荒川の絶対的な”練習量の多さ”です。サンデーのJSBとSTのWエントリーも含めて、どんな日常のスポーツ走行日でも荒川の姿を見かけない日は有りませんでした。まさに「努力家」と言う表現がピッタリのライダーです。故に、時に攻める気持ちが高まり過ぎて、今回のテストセッションのように転倒も喫する訳です。ただ、今回その転倒もウィーク中と言う事もあって、速やかに修復しなければなりません。メカニック総出で夜明けまでの作業が続きました。これは凄く有難い事です。 日中、暑さで体力も消耗した後、翌日朝の公式車検に間に合わせる為の時間に追われての作業はかなり精神的にも体力的にも厳しかったと思います。この老体の監督は恥ずかしながら申し訳ない気持ちと、後ろ髪を引かれる思いで先に帰らせて頂きました。松永代表とメカさん本当にお疲れ様でした。また、作業を補助して頂いたメーカーの方々誠にありがとうございました。そして迎えた公式予選、残念ながら荒川はこの予選にピークを持っていく事が出来ませんでした。本人もかなり悔しそうな表情が見て取れました。
一方、櫻山は予選開始早々にマイナートラブルを抱えながらもこのウィークベストの13秒台に入れるとは、「土壇場に強い男」ぶりに感心しました。
そして予選順位にはカウントされない加藤の予選、タイミングモニターに視入る自分は興奮を隠しきれませんでした。もともとこのプラン(代役ではあるが)に参加を決めた時から、加藤はきっちりと自分の役割を理解していた。「とにかく繋ぐ事、自分の走るパートを無理せずコンスタントに走り切って次へバトンを繋ぐ」 「ただ、チョット頑張るのは、、、予選かな?」とも言っていたまさにそのパフォーマンスを見せてくれた。わずか2周のアタックで見せた気迫の走りは確実にチームの記憶に残った。
と先ずは順調に通過した予選ではあったが、ここまでに少しチームではミスも犯してしまった。水曜日のテストセッションで櫻山のスタート時にタイヤウォーマーの電源が入っていない事に気付き出走が数分間遅れてしまった。また前にも記述したが予選出走した櫻山が1周で戻って来たのは、タイヤサービスでタイヤを受け取ってから誰も空気圧チェックをしていなかった。貴重な予選時間を割いてしまった事をライダーに謝りたい。
そして、迎えた決勝日、この日はYSP名古屋北のサービススタッフが来場し、早朝からピット前では、タイヤ交換のシュミレーションを再確認するなど彼らの意気込みを感じる。この決勝ではスタートライダーの荒川を筆頭に「繋ぐレース」を見せて欲しい。その荒川に”気負い”は無く、後にBS中継で視た映像では、ルマン式スタートもゆっくり!?走り、数周の間は序盤の混戦を避けるかのような「最後尾」をガッチリとキープする走りが印象に残った。この決勝では、レースの組み立て、スティント計画からタイヤのマネジメント、燃費計算まで全てチーフメカの持塚に任せた。監督としての自分の役割は、準備期間も含めて、このスタートラインに立つまでの任務がほとんど全て、、、 と考える。よって、レースのコントロールは持塚とプラットフォームのサインマン2人、そしてタイヤ等の指示系統は松永。に一任し、自分はイチ作業員に専念した。加藤の1スティント終盤での転倒は、加藤自身も想定外だったであろう。前述のように「自分の役割を分かっていた」加藤がそれを遂行している工程でアクシデントに見舞われるとは、実に、自分でも悔しい想いをしたであろう。
酷暑の中、意識がもうろうとしながらも折れたハンドルバーにしがみつき、残った力を振り絞ってピットまで辿り着けたのは、加藤の気力と責任感以外の何物でもないだろう。あとは、メカ達の頑張り所、30分後に再スタート出来た時に一番安堵したのは加藤であったに違いない。この後はスティント計画を調整しながら順調に、淡々と周回をこなし夜まで走り続ける事が出来た。そして、午後7時30分のチェッカーフラッグを見事にくぐる事が出来たのは、チーム全員でつかみ取った「完走」の二文字であった。ライダー、タイヤ交換と燃料給油のメカニック、バックのクルー、サインマン、タイヤやガソリンの準備、インターバルのライダーをサポートしたメンバー、RPT長野のスタッフ、応援に駆け付けたゲストの皆様、サービスサプライヤー様、関わった全ての方々に厚く御礼申し上げます。
レースウィークの3日間「アルクマ」と共に長野県のPRを実施しました。
鈴鹿8耐決勝レーススタート前 集合写真
鈴鹿8耐決勝レース終了後 集合写真
ハンディキャップを背負っている皆様と共に、鈴鹿サーキットクルージングを行うボランティア団体「風の会」へ櫻山選手が参加。会長は元スズキワークスライダー「水谷 勝」さんです。